2010年10月25日月曜日

添臥にも

引入れの大臣の皇女(みこ)腹にただ一人かしづきたまふ御むすめ、春宮よりも御気色あるを思しわづらふことありける、この君に奉らむの御心なりけり
引入れ役を仰せつかった左大臣の正室は今上の帝の妹宮に当たられていて、正室腹の一人娘を大切にお育てしているのですが、春宮よりも、お誘いがあったものの、思いわずらうことがあったのも、源氏の君に差し上げようというお心からでありました。

内裏にも御気色賜はらせたまへりければ、さらば、このをりの後見なかめるを添臥(そひぶし)にも、と催ほさせたまひければ、さ思したり
帝にもその旨お伺いをしていたところ、それならば、こういった折に源氏に後見人がないのだから、添臥にということでも、とお勧めいただいたので、元服の添臥しを折に婚約ということで決めていたのでした。

御前より、内侍、宣旨うけたまはり伝へて、大臣まゐりたまふべき召しあればまゐりたまふ
帝より、内侍に宣旨があり、左大臣をお召しになり、左大臣が参上します。

御盃のついでに
盃を頂く際のお言葉に

いときなき初元結に長き世を契る心は結びこめつや
加冠の時に結ぶ組みひもは紫であった、この組みひもを結ぶ時に、末永い夫婦の縁を約束する心を結びこめたのですね

御心ばへありておどろかせたまふ
帝のこころづかいにはっとする。

結びつる心も深き元結に濃き紫の色しあせずは
心を込めた深い紫の色だから、どうか色があせないでいてくれれば

と奏して、長橋より降りて舞踏したまふ
と奏上して、長橋より降りて、拝舞の礼をして帝に謝意をお表しになるのでした。